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カットニュース2-1 斜里町が知床の砂防・治山ダムの全面撤去を要望へ/廃ダムの流れ強まる
(2003.7.12)

北海道新聞、2003.7.9夕刊、見出し4段 【解説/Web管理者】知床観光で多くの人が訪れる最奥の「知床大橋」やそこに至る電気バス(夏季の一定期間運行)が走る道(林道)はいずれも森林伐採のためにつくられた。大橋の少し先で林道は行き止まりであり、そこまでの森は一度伐採された後の2次林で、原生林ではない。また、ホテル「地の涯」や羅臼岳登山の基地になっている木下小屋がある岩尾別温泉に至る岩尾別川も砂防ダムと治山ダムだらけの川。多くの観光客がそうした事実を知らないまま帰っていく。いままで斜里町や羅臼町も森と川と海のそうした環境破壊をいわば黙認してきたとも言える。さらに自然再生推進法の適用を求めることで、不況にあえぐ地元の建設業者に新たな工事機会をつくる意図も当然あるだろう。それでも今回の動きが砂防ダム、治山ダムが弊害をもたらし、その回復には撤去しかないことを行政の一端が認めた意味は大きい。実現すれば「廃ダム」への大きなうねりになるだろう。
 だが、撤去の内容、その後の自然環境の再生方法など不透明な部分も多く残されており、取り組まなければならない課題は多い。行政まかせで進めるのではなく、しっかりした経験と意見をもったNGO・NPOや専門家などの関与が必要だ。さらに例えば岩尾別川の河口にあるサケ孵化場で遡上するサケを根こそぎにしてしまうこともやめる必要がある。羅臼側の各河川の河口で沖獲りする方法内容も再検討するべきだ。孵化養殖一辺倒では本当のサケ保護にはならない。自然遡上と自然産卵をできる限り復活させて、種の保存を根本から見直すことも大きな課題になっている。 
斜里町 知床のダム撤去を/国、道に要請へ サケ遡上を復活
 【斜里】網走管内斜里町の午来昌町長は九日、知床半島に設置されている治山、砂防ダムの撤去を国に要請することを明らかにした。世界自然遺産候補地に選ばれた同半島を、サケなどが遡上(そじょう)できる状態に戻すことが目的で、根室管内羅臼町と協議した上で今月中にも、林野庁や道を訪れて要請する方針だ。
 知床半島には治山、砂防ダムが羅臼町側も含め、百カ所弱ある。一九六〇年代の森林伐採にともなう土砂流出の防止を目的に、林野庁や道が設置してきたが、個体数が減少するイトウやサクラマスの回復を目指し今回の要請を決めた。また、多くのダムが土砂堆積(たいせき)で機能を果たしていないとの指摘もある。
 ダム撤去について、午来町長は自然再生推進法(今年一月施行)の活用を提案する方針。同法は、過去に開発で壊された地域の自然環境を回復させる際、民間非営利団体(NPO)などが国の予算で公共事業として取り組める。
 既存のダムを撤去した例は台湾であるが、「国内では初めてではないか」(環境省)という。午来町長は「世界自然遺産にふさわしい土地を目指し、昔遊んでいたような豊かな川に戻したい」と話している。