新潟県に残された陸封型ヤマメ
(Oncorhynchus masou masou)

保護増殖事業


 1960年代の初頭,新潟県における陸封型(河川型)ヤマメの生息場所を6箇所確認していた。2001年4月現在、3箇所に激減した。残る3ヶ所も、様々な要因によって、絶滅寸前の現状にある。これらのヤマメは,貴重な遺伝的形質を保持しているかも知れない。遺伝子の多様性が叫ばれる昨今,これを保護する意味は大きい。トキに限らず、これら知られざる種の保存は,将来的にも意義のあることであろう。

 目に見えない水中の生物は,多くの人々が無関心であり、忘れられた存在になりがちである。ちなみに秋田県の陸封ヤマメの3河川は,現在絶滅したと思われる。青森県下北半島の大畑川のヤマメは,早くから天然記念物として保護され,健在である。

 新潟県内の陸封ヤマメの棲息渓流は、すべて漁業権の及ばない小さな川であったため,誰も気づかず放置されてきた。放置することが保護であった時代は終焉を迎えている。今私たちNPOが積極的に保護に取組まなければ,将来に禍根を残す。棲息流域の水質,周りの植生なども同時に調査してゆくが,あるいはこのヤマメの生息できる環境に、共通性が発見できるような気がしている。そのことが自然環境のあるべき姿を示唆してくれるかも知れない。

 捕獲,運搬、蓄養、採卵、受精、孵化、再放流と一連の作業があるが、捕獲、運搬は私たちNP0,
残る作業は、県内水面小出支場が引き受けてくれた。

 
 遺伝子調査のため、腹ビレの一部を切り取る作業
 陸封ヤマメの生息する小さな小さな渓流は、僅か数軒の集落の中を蛇行しながら山へ延びている。
背後の山の植生は、西日本の植生を思わせるように、タブ、クスノキなど常緑広葉樹の多い地帯だ。

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