大内宿

 釣り場を探しながら、偶然迷い込んだ場所だった。うかつにも、
ここが有名な観光スポットだとは知らなかった。
 砂利道を挟んで、両側に綺麗な水が流れる用水掘、
そしてかやぶきの家並み。
江戸時代にタイムスリップしたような、妙に懐かしく、
惹かれるものがあった。
 テレビの放映で、ここの風景も何となく俗っぽくなったけれど、
先日(4月下旬)久しぶりに訪れてみた。
無意識に撮った下の写真、
ぼくを惹きつけたのは、用水の流れだったことに気がついた。





 ヤマブキの黄色い花がさりげなく活けてある座敷。古い宿場街
独特の造りなのだろうか?ちょっときどって・・・

子どもの頃、ぼくの家の前にも同じような用水が流れていた。
水草が生え、小さな魚たちもいた。
だからこれが、人工的に作られた川だなどと、夢にも思わなかった。
サトイモの皮をむく水車が回り、
母親が野菜を洗っていた。
冬は消雪構になり、豊かな森林を通って流れ出した水には、
ミネラル分が含まれ、農業用水としても使われていた。
昔を振り返ってみる。
生活用水として大きな役割を果たしていた流れ、
そこには物理的な用途だけでなく、
水面に映る家並みや、夕餉のしたくの煙、匂いも、
そして四季の移ろいまで映し出していた。
隣近所の人たちの、人情までも映し出していたような気がする。

孫たちの土産を物色していて、店番のおばさんに、つい余計なことをしゃべってしまった。
「せっかくある川を、有効に使わない手はない。ジュースを冷やすだけでは
もったいないですね。イワナかヤマメを放したらいいですよ。
こんなに綺麗な水なのだから、覗き込んだ観光客は、
きっと感動しますよ」

                        ウエブアート