北の叉暮色
奥只見の北の叉川は、青春時代の思い出がいっぱい詰まったところである。
赤ん坊の長女をつれて泊った、ランプの宿村杉小屋。
夜中に激しい降雨、ぶらさがっていたタヌキが怖いといつまでも泣き止まない娘。
途方にくれた一夜。
それでも釣りがしたかった。
数年後,偶然出合った,開高健。夜更けまで語り合ったっけ。
その後再び会うことはなかった。
蛇子沢や,白沢で出くわした巨大イワナ。
すべてが朦朧とした暮色の中に溶け込んで,
今は悲しみの時間に浸っているような気がする。